HAIR TOUCH YOU のばせば届く。

INTERVIEW

医療⽤ウィッグを受け取った⽅ のばした髪をヘアドネーションした方

「本当は手放したくなかった髪だからこそ…」がん闘病とヘアドネーションを同時に経験した美容系インフルエンサー・ここんが伝えたいもの

フィーノが医療用ウィッグをとりまくすべての方をつなぐプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】。インタビューを通し、医療用ウィッグを必要とする方、髪を寄付する方、支援する方など、360°の方々の想いをお届けいたします。今回は、医療用ウィッグの使用経験があり、ヘアドネーション経験もある、美容系インフルエンサーのここんさんにお話しを聞きました。「必要だったのに手放さざるを得なかった」と語る、大切な髪をドネーションしたときに感じた想いとは。

家族の想いが込められた、大切な医療用ウィッグ

まず、ここんさんが医療用ウィッグを使用するに至った経緯について教えてください。

25歳のときに若年性乳がんと診断されました。その時点ですでにステージ2bで、もう少し遅ければステージ3になっていたかもしれないと言われました。すぐに大学病院を紹介され、一週間後には治療を開始するという、ものすごいスピードで話が進んで行ったのを覚えています。治療開始前に「治療中は必ず髪が抜けるからウィッグを用意したほうがいい」と看護師さんから言われたので、病院が提携している医療用ウィッグの会社の中から一社を選び、自分用のウィッグを作ってもらいました。

医療用ウィッグについて、従来のウィッグのイメージと異なる点はありましたか?

正直「高いな」と思いましたね。私が購入した医療用ウィッグは、結構長めのロングヘアだったので、40万円くらいだったかな……。当時(8年前)でも割高だったと思います。いろんなことが一気に押し寄せてパニックになっていた時期でもあったので、医療用ウィッグの購入もかなり悩んでいたのですが、妹が「そのお金でお姉ちゃんの髪が買えるなら、私が買ってあげる」と言ってくれて。結局、家族がみんなでお金を出しあってくれて購入できたのですが、そのときの妹の言葉には本当に救われました。家族の想いが込められたウィッグに、自分のメンタルを支えてもらいましたね。

「経験したからこそ語れること」とそのジレンマ

初めて医療用ウィッグを手にされたときのお気持ちをお聞かせください。

手元に来た段階では、まだ髪があったので「いつ、このウィッグの出番が来るんだろうか」というのが、率直な感想です。使わなくていいならそのほうがいいとは思いつつ、でも、自分に合ったウィッグを持っている安心感もあるという、少し複雑な気持ちでした。

選んでいて驚いたことは、購入した医療用ウィッグの毛質の良さです。丁寧に洗えば絡まりづらいし、ストレートなど簡単なセットなら自分でもできたので、本物の髪のように感じました。市販のファッションウィッグもいくつか使用していたのですが、医療用ウィッグを持っていたおかげで、失敗を恐れず気軽に購入できたように思います。そういう面でも、最初の段階で医療用ウィッグを持っていたのは良かったかなと感じます。

当時、医療用ウィッグに関する情報はどのように入手されていましたか? また、現在Instagramを中心にインフルエンサーとしてご活躍されるここんさんですが、当時も医療用ウィッグについて情報発信をされることはありましたか?

鍵付きのInstagramアカウントで同じ病気を持つ人たちとたくさんつながっていたので、そこで情報交換をしたり、ブログなども参考にしたりしていました。クローズドなアカウントでしたが、私自身も眉毛の上手な書き方やウィッグの自然な被り方などの投稿をしていたんです。もともと画像のレイアウトやデザインを考えるのが好きで、つい、投稿も凝っちゃうんですよね。そうしているうちにInstagramでの投稿が楽しくなり、結果として今の仕事につながっていきました。

一方で、闘病のアカウントを持っている人に対し、心ないコメントをする人もいたりして。私は鍵付きだったので幸い大丈夫でしたが、嫌なコメントのせいでアカウントを閉じてしまった友人も何人かいて、悲しい気持ちになりました。

つらいご経験にも関わらず、お話ししてくださり本当にありがとうございます。今では、オープンなアカウントで若年性乳がん罹患者だったことをご公表されているここんさんですが、当事者の方や周囲の方からご相談を受けることはありますか?

DMで「ウィッグはどこで買いましたか?」とか「治療の前に用意しておくべきものはありますか?」など、ご連絡をいただくことがあります。また、公表をされていない方から、こっそり「私も実は同じ病気で、○年目なんです」というお話を聞くこともあります。この先の付き合いが長くなるとわかっている病気なので、いろんな方から「元気に発信している人を見ると安心する」というお声をいただきますね。

心に大きな影響を及ぼす外見の悩みと、ケアの重要性

医療用ウィッグはアピアランス(外見)ケアの一環といわれていますが、アピアランスケアについての説明は事前に受けられましたか?

治療が始まる前にある程度の説明は受けたのですが、そこから先は治療が始まってからじゃないとわからないことも多くて。大きな治療を経て何か変化があれば、その都度先生に質問をしていました。診察中のコミュニケーションの中で、アピアランスケアもやっていただいていた感じですね。先生や看護師さんは普段からいろんな患者さんと接していて様々なケースを見てこられているからこそ、「ああ、よくあることだね。それはこうしたらいいよ」と、冷静に私のケースに合わせてアドバイスをくれるんです。でも、医療関係者以外の方に相談すると、どうしても「かわいそう」という想いが先立ってしまうので、なかなか気軽には話しづらくて。だからこそ、先生や看護師さん、医療用ウィッグを扱っている方など、専門家の方々に相談できる機会があって良かったなと思います。アピアランスケアがなかったら、精神的にかなりしんどかったかもしれません。

現在は美容系インフルエンサーとして活動されていますが、当時の美容の知識は、闘病中にも活かせましたか?

実はもともと、そんなに美容に興味があるほうではなかったんです。朝は少しでも長く寝ていたいから、ほとんどメイクをせずに会社に行くときも多かったですし(笑)。でも、闘病の影響で肌の血色が悪くなり、眉毛やまつ毛がなくなり、人生で初めて自分自身の感情として“メイクをしないと外に出られない”という経験をしました。そのとき、外見の悩みがどれだけメンタルに影響を及ぼすのかを身をもって理解して。闘病期間中にいろんなメイクを試して、たくさんのコスメを使用したので、それらを紹介するのは自宅でもできると思い、Instagramでの発信を始めました。今はイメージコンサルタントの仕事もしているのですが、皆さん多かれ少なかれ気になっていることや悩みがあって相談に来てくれていると思うので、見た目を少し変えることで気持ちが前向きに明るくなればと思いながらカウンセリングをさせていただいています。

手放さざるを得なかった髪だからこそ「絶対に誰かの役に立ってほしい」

抗がん剤治療の開始を理由にヘアドネーションを行ったとうかがいましたが、ヘアドネーション自体は以前からご存知だったのでしょうか?

当時、ちょうど花嫁ブロガーが流行っていた時期だったのですが、結婚式が終わったら髪を断髪し、寄付するというのを発信している人たちがちらほらいたんです。私も結婚式を控えており、髪を伸ばしていたので「あ、髪って寄付できるんだ」と、そのときに初めて知りました。でも、髪を伸ばしている最中に乳がんが発覚し、治療で髪が抜けるので切っておいたほうがラクだと先生から言われて。「せっかくここまで伸ばしたのに、病気を理由に切らなきゃいけなくて、しかも捨てられちゃうなんてもったいない」と思い、寄付することに決めました。「絶対に寄付するぞ」というよりは「悔しい」みたいな気持ちが強かったかもしれません。一方で、ヘアドネーションカットをした美容院では、まとめた髪の一部を自分で切らせてもらったりして、イベント感覚で髪を寄付できたのはちょっと楽しかったですね。

さまざまな葛藤を抱えながら、ヘアドネーションをされたのですね。寄付した髪が、どのような方々に届いてほしいと思われていましたか?

私の髪は最も長いところで45cmくらいあり、小児の医療用ウィッグになる可能性もあると言われました。ウィッグを必要としている小さな子どもたちに届くのは、素直に嬉しいと感じましたね。いらなくなった髪ではなく、私にとっては必要だったのに手放さざるを得なかった髪なので、とにかく「絶対に役に立つんだぞ!」みたいな、“念”を込めながら寄付したことを覚えています(笑)。

罹患者であり発信者である私だからこそ負える“表現”の責任

医療用ウィッグの使用と、ヘアドネーションのどちらも経験されたここんさんだからこそ感じる、ヘアドネーションをする側・もらう側に共通する想いがあれば教えてください。

ヘアドネーションを通じて、寄付をする側・もらう側、どちらも“自分の髪”の大切さに気付くことができるのではないかと思います。加えて、とても大切なものだからこそ、人の髪について軽々しく言及するのは絶対にやめようとも思いました。私が医療用ウィッグを使っているときは一番自分の髪が抜けているタイミングだったので、ふとした時に目や耳にするテレビや雑誌の言葉にすごくダメージを受けてしまいました。もちろん他意はないと理解しながらも、バラエティ番組などで髪についてイジるような場面があったりして、テレビを見るのが怖くなった時期もあります。「人の見た目に関わることを言ってはいけない」と子どもの頃によく言われていたけれど、冷静に見まわしてみると、見た目についての表現って受け手によって千差万別なんだと、そのときに思い知らされました。だから“自分がその立場だったらどう思うか”を想像しながら発信することを心がけるようになりましたね。

今では多様性を大事にする考えが、当時に比べて広まってきていますよね。そのおかげか、最近は罹患者から見ても「グサッ」とくるような表現がすごく減ったように感じます。この病気は、ないと思いたいけれど、もしかしたらもう一回があるかもしれない。そのもう一回が万が一あったときに、嫌な気持ちになるようなものは減っていたほうが良いですよね。そして、いま治療中の人たちや、これから治療に向かう人たちも、嫌な思いをする瞬間が私の頃より少なくなっていたら良いなと思います。

二度目のヘアドネーションは、ひとつのストーリーとして見てもらいたい

とても考えさせられるお話を聞かせていただき、ありがとうございます。フィーノのプログラムでも、医療用ウィッグに関わる人たちの想いに寄り添った活動や発信をしていきたいと思います。その中のひとつの取り組みとして、ヘアドネーションをより良い体験にしていただくための「オリジナルドネーションキット」を無料でお配りしているのですが、いかがでしょうか。

私の行きつけの美容院はドネーションカットを受け付けていなくて、初めての美容院に行かなくてはいけなかったんです。伸ばしていた髪を切ろうと思った理由について改めて説明する必要もありますし、ちょっと複雑な気持ちの中でドネーションしたんですよね。8年前にこれがあれば、慣れ親しんだ美容師さんにこのキットを渡すだけで、嫌な気持ちを味わうことなく寄付できたのかなと思います。あと、封筒に定規が印刷されているのも良いですね。31cmの長さを測るのは難しいので、すごく便利です。私は髪が伸びたらまたヘアドネーションをやろうと思っているので、次はこれを使ってヘアドネーションができると思うと嬉しいです。

ぜひご活用いただけると嬉しいです! 今後、ここんさんはご自身のアカウントで、医療用ウィッグやヘアドネーションに関する発信をしていきたいと思われますか?

先ほどもお話ししましたが、髪が伸びたらまたヘアドネーションをしようと思っていて、そのときは必ずInstagramで報告するつもりです。今でも、ヘアケア系の商品を紹介するときは「昔、病気の治療で髪が抜けてしまって」といった話を添えるようにしていて。そういうふうにちょっとずつ種を撒いているので、ヘアドネーションをするまでの道のりをストーリーとして見ていただければと考えています。今までのことをまとめてひとつの形にして、ちゃんと世に送り出したいですね。

また、私はパーソナルカラー/パーソナルデザインコンサルタントとして対面のコンサルティングを行っているのですが、当サロンを利用してくださっている方の中に「結婚式が終わったので髪をバッサリ切ろうと思う」というお客様が何名かいらっしゃいます。明らかに寄付できるだけの長さがある方には「せっかくなのでヘアドネーションをされてみてはどうですか?」とお話をさせていただくこともありますよ。

「寄付してくれた髪があることで、前向きに外に出られるようになる人たちがどこかにいる」

今後もフィーノのプログラムでは様々な取り組みを考えているのですが、ここんさんが一緒にやってみたいことがあれば教えてください。

医療用ウィッグを使用していた頃、自然に見せるためにたくさんの工夫をしました。それはいまだによく覚えているので、皆さんに自分の経験をお伝えできたら嬉しいです。また、ウィッグが必要な方は、ウィッグだけがあればOKというのではなく、どうしても眉毛やまつ毛などのメイクも必要になってきます。昔よりは美容の知識がついているし、タッチアップを行える資格も有しているので、そういった部分も生かしながら、悩みを持つ方々をトータルでサポートさせていただきたいですね。

ありがとうございます、ぜひお力を貸していただけると嬉しいです。それでは医療用ウィッグをサポートするために、ヘアドネーションを検討している方に向けてメッセージをお願いします。

あなたが寄付してくれた髪があることで、選択肢が広がって前向きに外に出られるようになる人たちがどこかにいます。寄付と聞くとハードルが高いように感じるかもしれませんが、「自分、ちょっと良いことしちゃったかも」くらいの気持ちで、前向きにドネーションをしてくれたら、医療用ウィッグを使わせてもらっていた私としても嬉しく思います。絶対に誰かが喜んでくれると思うので、その誰かの役に立てることを、ぜひ誇りに思ってもらいたいです。

ここんcocon_makeup

アピアランスコーディネーター/キャンサーサバイバー。1990年生まれ。25歳で若年性乳がんに罹患。抗がん剤治療、乳房全摘術を経験。現在もホルモン療法にて治療中。闘病をきっかけに見た目の与える心理的影響の大きさを実感し、美容業へ転身。美容国家資格・イメージコンサルタントの資格を取得。インスタグラムにて美容法を発信しつつ、アピアランスコーディネーターとして表参道でコンサルティングを行う。

「fino ウィッグBank」について

フィーノの医療用ウィッグプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】の中のひとつの取り組みである「fino ウィッグBank」では、現在ヘアドネーションを募っており、31cm以上であればどのような髪の状態の方でも、また年齢や性別も問うことなくご参加いただけます。寄付いただいた髪については、NPO法人「全国福祉理美容師養成協会(ふくりび)」にサポートしていただき、医療用ウィッグの販売のみならず、レンタルウィッグや医療用ウィッグ製作技術のための講義用として寄贈するなど、髪の状態と、その時々のニーズに応じて最適な活用法にて無駄なく生かしていきます。

ヘアドネーションをご希望の⽅は
必ずfinoオリジナルドネーションキットを
お申込みください。

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