「この瞬間が素敵な思い出として残るように…」1000人以上のドネーションカットを担当した美容師・マツカワリュウドウの視点
フィーノが医療用ウィッグをとりまくすべての方をつなぐプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】。インタビューを通し、医療用ウィッグを必要とする方、髪を寄付する方、支援する方など、360°の方々の想いをお届けいたします。今回は、ドネーションカットを得意とする人気美容師・マツカワリュウドウさんにお話しを聞きました。マツカワさんはこれまでに1000人以上のドネーションカットを担当しており、ご自身のSNSではヘアドネーションに関する情報を積極的に発信しています。マツカワさんは、日々どのような思いを抱きながらヘアドネーションと向き合っているのでしょうか?
興味が、素敵な思い出に変わるようなヘアドネーションに
マツカワさんがヘアドネーションを知ったきっかけと、実際にご自身の店舗でドネーションカットを始めた理由について教えてください。
今から8年前。前に働いていた店舗の社長が、ヘアドネーションについて教えてくれました。こんな素敵な取り組みがあるなら、ぜひうちの店舗でもやってみようと始めたのがきっかけです。当時はドネーションカットを行っている美容院が都内で3店舗ほどしかなかったこともあり、かなりの数の予約が入りました。ヘアドネーションの需要の高さに驚かされましたね。
マツカワさんは、SNSでヘアドネーションについて積極的に投稿されていますよね。発信を始めようと思った理由について教えてください。
ヘアドネーションに対する不安要素を少しでも払拭できればと思い、前の店舗でもビフォーアフターの写真をホームページに載せていたんです。そこで「自分はもっとこういうふうに発信したい」という思いが出てきて、個人のホームページを作成しました。動画があればより分かりやすいと思い、まずは100人撮影してみようと考えてYouTubeチャンネルも始めたんです。
ヘアドネーションは強制するようなものではないので、僕自身は「少しでも興味を持ってくれたら」というスタンスで取り組んでいます。それでも、僕の動画でヘアドネーションを知り、そこから二年かけて髪を伸ばしてきたというお客さまにご来店いただけたこともあり、すごく嬉しかったですね。また、動画に出てくださっている方は、この瞬間が素敵な思い出として残るように考えながら撮影・編集しています。ご本人に喜んでもらえれば嬉しいですし、撮影した動画をご家族やご友人に見てもらうことで、さらにヘアドネーションが広まれば素敵だなと思います。
自分の髪質でもヘアドネーションができるのか、不安に思われている方は多いようです。マツカワさんのもとにいらっしゃるお客さまはいかがでしょうか?
僕が動画を制作する際は、10投稿中1~2投稿くらいはあえて「髪質」について取り上げるようにしています。僕の店舗に来てくださるお客さまのほとんどが、事前にそういった動画を観てくれているので不安の声を聞くことはありません。ただ、動画内でいただくコメントには髪質に関するものもよく見かけるので、(団体ごとに基準はあれど)基本的にどんな髪質でもドネーションできるというのを知らない方はかなり多いのかなと思います。今後もSNSでの発信を通じて、ヘアドネーションへのハードルを下げていけるといいなと思っています。
「バッサリ切る」、その先まで見据えるのがドネーションカット
ヘアドネーションできる長さの髪をバッサリ切るというのは大きな変化ですが、美容師さん側も緊張なされますか?
切ることに対する緊張感はないですが、美容師さんとしての経験が浅いと、例えばくせ毛の方のドネーションカットは戸惑ってしまうことがあるかもしれません。くせ毛の方でもロングヘアにしていると直毛に見えるのですが、バッサリ切ると、思っていた倍以上のウェーブが出ることがあります。くせに対してしっかりアプローチできる美容師さんなら問題ないのですが、対応できない美容師さんが施術をするとクレームに繋がってしまう恐れもあります。僕は、もみあげや襟足などウェーブが出やすい部分を予め確認し、くせがある場合は「ショートヘアにすると、今後こういう施術が必要になるかもしれません」と事前に伝えるようにしています。また、ドネーションカットをする際、くせ毛の人の髪は引っ張ってはいけないんです。切った後に髪が上がり、思っていたよりも短くなってしまうので。これも、ドネーションカットの経験をたくさん積んだからこそわかることがあると実感しています。同時に、美容師としてのインプットがなければ、ドネーションカットの際にお客さまへの提案の幅が狭まってしまいますので、お客さまのニーズに最大限応えられるよう、常に技術や知識をアップデートしていくことを大事にしています。
ヘアスタイルだけでなく気持ちまで“生まれ変わった”かのような体験を
「自分はショートヘアが似合わない」と思い、ヘアドネーションに踏み出せない方も多い印象です。ショートカットを得意とされるマツカワさんは、その点についてどう思われますか?
美容師としては、ショートヘアへの不安に対してしっかりアプローチすることが大切だと思っています。僕は、まずその人がもつ個性や魅力的だと思うパーツを、美容師視点でさらに引き出しながら髪型を決めています。たとえば「白銀比」というものがあるのですが、「黄金比」よりも丸みがあり、日本人の顔に合った比率なんです。そういったものを踏まえた上で「この目の配置はすごく魅力的で、ここにポイントを置くと素敵なので、このあたりにおくれ毛を作りましょう」「ここは気にされているので、気にならないようなスタイルにしましょう」というふうに、細かくコミュニケーションを取りつつデザインしていくようにしています。
技術面だけではなく、お客さまとのコミュニケーションも大切なのですね。ドネーションカットの前後で、お客さまはそれぞれどのような反応をされることが多いですか?
カット前は、どんな仕上がりになるのか不安に思われている方とワクワクされている方が半々くらいです。僕は必ず完成形のイメージ写真を共有してからスタートするようにしているので、不安な方には少し安心してもらい、ワクワクしている方にはよりワクワクしてもらえていると思います(笑)。カット後は、声にならない声を漏らす方や、ものすごく喜ばれる方などそれぞれですが、いずれにしても普段のカットではなかなか見られないような、まるで“生まれ変わった”くらいの大きな反応をいただけますね。
僕自身も心を動かされたエピソードがあるのですが、以前、髪を切り終わった後に涙を浮かべている方がいらっしゃったんです。話を聞けば、その方は重い病気を患ってしまったそうで、次にまた来られるかわからない、と……。その前に、ヘアドネーションができて良かったと仰っていました。でもそれから一年後、その方が再び来店してくださったんです。店舗が変わっていたのにわざわざ調べて来てくれて、本当に嬉しかったです。
美容師に、もっと医療用ウィッグと関わる機会を
マツカワさんは本当に経験が豊富ですが、ヘアドネーションや医療用ウィッグに関わる美容師さんはまだまだ少ないと言われています。
僕も、医療用ウィッグのカットをした経験はありません。理由としては、単純にこれまで医療用ウィッグと関わる機会がなかったというのが大きいです。もし機会があれば、まずは製作の現場を見てみたいですね。医療用ウィッグが作られる過程は写真でしか見たことがないので、どのように作られているのかなどを学びたいです。ドネーションカットのみならず、医療用ウィッグのカットにも関わりたいと思う美容師さんは多いと思いますよ。
ぜひ、フィーノでは美容師の皆さまのそういった想いまでもつないでいきたいと思っています。そのひとつの取り組みとして、ヘアドネーションに興味のある一般の方はもちろんのこと、施術する側の美容師さんにもより良い経験にしていただけるようにと、オジナルドネーションキットを用意いたしました。
ヘアドネーションのフローが分かりやすく書かれているので、すごく良いと思います。ドネーションされた髪の使用用途についても記載されていますし、トラブル回避にもつながるかと。こういうことは、美容師側もきちんと事前にアナウンスしなくてはいけないなと感じます。
「赤」で全国の小学校をつなぐ、ヘアドネーションリレー
このほかにも、どのようなサポートや工夫があれば、ヘアドネーションがより良い経験になり、ヘアドネーションをしたい人が増えると思いますか?
僕は、全国の小学校をまわってみたいと考えています。これはあくまでも僕の肌感覚ですが、ヘアドネーションのために髪を伸ばしている子が、各小学校に一人はいると思っています。たとえば、体育館に生徒を集めて、ヘアドネーションをしたい子の髪をみんなの前でカットするイベントなど開催してみたいですね。その子にとっても良い経験になるし、周りの子も、実際に目の前で見るからこそ感じるものがあると思うんです。フィーノのブランドカラーである「赤」は、「赤い糸」とも捉えることができますよね。全国の小学校が「赤」でつながっていく、ヘアドネーションリレーのような取り組みがあっても素敵だなと思いました。
とても素敵なアイデアを、ありがとうございます!ぜひ参考にさせてください。 では最後に、医療用ウィッグをサポートするためにヘアドネーションを検討している方や、ヘアドネーションに関わる美容師の方々に向けてメッセージをお願いします。
「髪」に色んな人の想いが乗せられ、たくさんの人たちがつながっていく。ヘアドネーションの魅力は、自分の知らないところで喜んでくださる方がいることだと思っています。ヘアドネーションをする人はもちろんのこと、こういった活動を通して、医療用ウィッグをつけてみたいという人も増えたら嬉しいですね。